「尿酸」について

こんにちは、Dr.Kです!

今回は、ヘルスコーチングをしていると
聞かれることの多い「尿酸」について
お話しをしてみたいと思います。

【尿酸ってなんなの?】

「尿酸」ってなんなんでしょうか?
そよ風が肌に当たっても飛び上がるほど痛い
と言われる「痛風」の原因として知られています。

そもそもですが、
尿酸は最初は膀胱結石の中から発見されましたが、
その実体は分かりませんでした。

その後、尿酸は「プリン骨格」と言う構造を部分的に持つ
「プリン体」と総称される化合物の
代謝産物であることが分かってきました。

プリン体というと
美味しい食物に含まれるイメージ
があると思いますが、実は、
・DNA、RNA:いわゆる「遺伝子」の本体
・サイクリックAMP:ホルモンによる情報伝達の際に細胞内情報伝達物質
・ATP:細胞のエネルギー源

などはプリン体骨格を持つので、
尿酸の生成源となっています。

そして尿酸はほとんどの動物では
アラントインと言う物質まで分解され、
体内にたまりません。

ところが人間と一部の霊長類は
尿酸を分解する酵素(Ulicase 尿酸酸化酵素)が
遺伝的に変異して機能しなくなった
ので、尿酸がたまる傾向があります。

人間の体内では
毎日約0.7gの尿酸が作られると言われています。

この産生が多くなったり排泄が低下すると
尿酸は体内に蓄積し、なんらかのきっかけで
痛風発作を起こします。

要するに、
尿酸はプリン体の代謝産物、つまり廃棄物であり
プリン体処理がうまくいかないと痛風になる。
尿酸自体に役割(生理活性)は無い。

と言うのが従来の常識でした。

 

【厄介な「ゴミ」では無かった】

元々膀胱結石から発見されたと言う経緯から
腎臓からの排出が注目されるのですが、
実は体内で産生された尿酸の
2/3程度は腎臓から
1/3程度は消化管などの腎外経路から
排出されていることが分かっています。

そして、さらに驚くのが
腎臓内の尿細管で尿酸は約90%も再吸収されている
と言う事実です。

ただのゴミを再吸収するほど
人間は愚かなのでしょうか?
そんなことは無いことが
分かりつつあります。

痛風の患者さんはアルツハイマー型認知症になりにくい
(Lu N et al.: Ann. Rheum Dis 75(3), 547-551, 2016)
と言う報告が出てきてから、
その他にもパーキンソン病、多発性硬化症、即索硬化症
などの病気についても尿酸値が高いことが
発症抑制あるいは進行抑制の効果がある可能性が
指摘されています。

これらの神経疾患と言われる病気の原因には
活性酸素の影響があるとされています。

そして、実は
尿酸には強力な抗酸化作用がある
と言うことが分かってきました。

正確に言うと、
・適正濃度下では抗酸化作用
・高濃度条件下では酸化作用
を示します。

体内の臓器によって
尿酸濃度が異なる為に、
部位によって酸化作用、抗酸化作用
のどちらが働くかは異なります。

細菌感染などによって細胞が破壊された際に
尿酸が放出されることにより、
免疫系の樹状細胞を刺激して
自然免疫を活性化させる
と言う機能があることも分かってきました。

その他にも面白い仮説があります。

塩分を自由に摂取できなかった時代には
レニン・アンギオテンシン系と言う経路を刺激することで
尿酸が血圧を維持する働きもしていた
のでは無いかと言うのです。

天然の抗酸化物質として
ビタミンCがあり、
多くの動物はビタミンCを体内合成できます。

進化の過程で人間は合成能力を失いましたが、
その代替として尿酸が使われているのでは無いか、
と考える研究者もいます。

と言うことで、
尿酸は無意味な廃棄物では無い
のです。

【尿酸値は高くても良いのか】

この様に素晴らしい機能が分かってきた
尿酸ではありますが、
高濃度になってしまうと、
体内で結晶を形成してしまい、
関節痛や皮下結節、尿路結石などを
引き起こしてしまいます。

ですから、
生活習慣の改善や薬により
尿酸濃度を下げることが行われます。

「プリン体を多く含む食事を避ける」
と言う指導が長年行われてきましたが、
そもそも
血液中の尿酸の多くは、
「自分の細胞」や「エネルギー代謝」の
結果として出来る
ものです。

ですから
この様な指導が著効しないことは当たり前
なんですね。

これはコレステロールについても
同様のことが判明しています。

血中のHDL、LDLは自分の肝臓で合成されたもので
食事中のコレステロールとは相関しない
と言うことです。

ではどうすれば良いのでしょう?

ここまで読んできたあなたには
なんとなく分かっているのでは
無いでしょうか?

尿酸の大きな機能はなんでしょうか?
強力な抗酸化作用(適正濃度下において)
ですよね。

と言うことは、
高尿酸血症とは、
細胞レベルの慢性炎症や過剰な活性酸素に
対処する為の身体の防衛反応
と想像することが出来ます。

古代の地球上において酸素は猛毒で、
生命体は酸素を使っていませんでしたが、
ミトコンドリアを取り込み酸素をうまく使えた
生命体のみが生き残り、現在に至っています。

そして
酸素を使う様になった代償として、
活性酸素の害に悩むことになる
のですが、
SOD(Super Oxide Dismutase 活性酸素不均化酵素)
と言う強力な抗酸化作用を有する酵素
を作り出すことで対応したのです。

しかし
現代の生活習慣や生活環境では
それだけでは処理しきれない状況になり、
その対応策のひとつとして、
尿酸値を上げると言う反応がある
と言う仮説です。

であれば、
慢性炎症や活性酸素への対応をする
と言うことが一番の対策になります。

抗酸化作用のある
・ビタミンA
・ビタミンC
・ビタミンE
・CoQ10(コエンザイムQ10)
に加え、

抗酸化物質を還元化し再活性化させるαリポ酸
色の濃い植物に含まれる「ファイトケミカル」
なども積極的に摂取して身体をサポートする
ことがとても大切になります。

ファイトケミカルと言うのは、
健康に有用な植物に含まれる色素成分の総称で、
βカロテン、リコピン、アントシアニン、レスベラトロール
などが有名です。

これらは抗酸化物質としても有用ですが、
継続して摂取することで体内での
SOD産生を活性化させる働きがある
ことも分かっています。

加えて、
現代社会の大きな問題である「糖質過剰」
に伴う内臓脂肪蓄積による、
腎臓機能障害が様々な病気の原因になっている
と言う説があります。

塩分の排泄機能障害により高血圧が、
尿酸の排泄機能障害により高尿酸血症が
起きやすくなる
と言うのです。

ですから、
高尿酸血症や痛風でお悩みの方は、
・抗酸化物質を意識して摂る(身体のSOD不足をサポート、サプリメントも活用)
・糖質を減らす(糖化源・活性酸素源を減らす、内臓脂肪を減らす、急性期治療の為には完全に断つ意識)
・適度な運動と十分かつ良質な蛋白質、脂質を摂る(内臓脂肪を減らす)
と言うことがとても大切です。

是非できることから
始めてみて下さいね。