【蛋白質とアミノ酸の基礎知識】

こんにちは、Dr.Kです。

動物性食品を食べるべきか
ヴィーガンやベジタリアンか
の様な論争がされる際に、
その理由のひとつとして
「蛋白質」が取り上げられます。

正しい知識を持っていないと、
トンデモ理論に惑わされることに
なります。

例えばですが、
ヴィーガンの方が書かれた
とある記事では、

「蛋白質は蛋白質からでは無く
アミノ酸から作られる」ので
「動物性蛋白質は意味がない」。

「アミノ酸は植物にも含まれる」が
「加熱調理で使えなくなる」。
だからマクロビオティックの人達は
アミノ酸が吸収出来ず、
ローフードの人達はアミノ酸を十分に
吸収できる。

と言う理論を展開されていました。

ほとんどの蛋白質の機能は
42℃を超える熱で失われます(失活)が、
そのことを曲解されたんでしょうか?

まず最初に確認しておきますと、
ヒトの身体を構成する蛋白質は
20種類のアミノ酸から出来ています。
自然界にはこの他にも2種類の
アミノ酸が確認されており、
免疫機能を活性化する作用がある
とされています。

「必須アミノ酸」で検索してみると
より詳細な情報が出てきます。

そして人間の身体は、
蛋白質をペプチド(50個未満のアミノ酸が繋がったモノ)や
アミノ酸レベルまで分解する
消化機能を有していますので
蛋白質は使えないと言うことは
無いです。

そもそも
動物性食品にも植物性食品にも
アミノ酸がそのまま含まれている
と言うことはほぼ無いです。
発酵処理や熟成処理などの結果、
旨味成分として発生してくる
ことはありますが。

栄養素の消化吸収と言う
観点から言うと、
加熱調理したモノの方が
より消化吸収しやすい傾向に
あります。
失活した蛋白質でも
十分栄養源になります。

もし加熱した
アミノ酸や蛋白質が使えないのなら、
火を発明し料理を発展させた民族は、
マトモにアミノ酸吸収が出来ずに、
栄養失調で滅んで良いはずです。

水と二酸化炭素になる様な
完全燃焼をさせた場合には、
アミノ酸として働くことは
無くなりますけど、
常識的な調理であれば
問題ありません。

動物性でも植物性でも
食材に含まれる蛋白質が
消化酵素の働きで
アミノ酸レベルに
分解された後で吸収され、
体内の蛋白質合成や
非必須アミノ酸合成に
利用されるのです。

「植物性蛋白質の方が消化吸収率が悪い」
と言う話もありますよね。
コレは食材から摂る場合の話で、
人体には消化できない食物繊維が
一緒に含まれていることにより
起こることです。

動物性食品は食物繊維が無いですから、
消化吸収はしやすいということです。

加えてその蛋白質に含まれる
アミノ酸の種類やバランスが
とても大切です。

アミノ酸の中には身体の中で
合成できない8種類の必須アミノ酸が
あります。成長期の子供の為に、
体内合成速度の遅いヒスチジンも
含めて9種類とする場合もあります。

そしてこの必須アミノ酸は、
全てが必要量無いと
十分な機能を発揮しません。

植物に含まれるアミノ酸に
特定の必須アミノ酸が
含まれていなければ、
代謝が上手く機能しないので、
結局アミノ酸が摂れていないのと
同じなんです。

ですから、複数種の植物を
組み合わせて食べることで、
欠落してるアミノ酸をカバー出来、
人間にとっての必須アミノ酸が
カバー出来るので、
むしろその様な不足アミノ酸を
カバーする組み合わせを知って
ヴィーガン食をすることが
健康の為には大切です。

伝統的な料理は
実はそう言う視点で見ると、
食材毎の偏った栄養素を
補い合う組み合わせのことが
多いのも興味深いです。

先人達が食した後の体調などを
感じながら試行錯誤して
作り上げた知恵と言っても
良いのかも知れませんね。

全体としてアミノ酸がバランス良く
摂れているかどうかで
アミノ酸が十分かどうかが決まります。

アミノ酸バランスは、
アミノ酸スコアと言う数値で
比較することが出来ます。
もちろん含まれる量も大切です。

動物性食品には種類や部位により
細かな差はありますが、
ザックリ言うと
20%の蛋白質が含まれており、
ほとんどのアミノ酸スコアは
100です。

一方で植物性食品の場合には、
種類によっての差がかなり大きく、
アミノ酸スコアも大豆で86、
精白米で65、小麦粉で44
とされています。
更に消化吸収率も低いので、
必要量を摂るためには、
かなりの量を摂る必要があります。

一般的には体重1kgあたり1g/日程度
の蛋白質が必要とされています。
運動量が多かったり成長期の場合、
1.5-2g/日程度です。
体重50kgの場合は一般人は50g/日、
成長期の子供やアスリートは
75-100g/日の蛋白質が目安と言うこと。

ただ、
植物食を推奨する人達の中には、
体内では細胞の入れ替わりが常に
起こっておりアミノ酸再利用も
行われているので、
体重1kgあたり0.37g/日程度、
カロリー換算で13-20%あれば
十分と主張する方もいます。

この程度であれば完全植物食で
実現可能なんですね。
もちろん消化吸収率と
アミノ酸バランスは意識した上で、
の条件がつきますが。

かなり少な目なんですが、
実は日本の栄養摂取基準では、
カロリー換算で蛋白質は13-20%
が理想的と言われています。

この基準は単に
日本人の食事の平均から
割り出した数値に過ぎず、
この割合の食事で健康になるとか
病気予防が出来るわけでは無いです。

そしてなんと、
この少な目の蛋白質摂取基準すら
多くの日本人は満たせていません。

宗教や思想によって、
完全植物食を選択する場合は、
上記の様なことに気を付けて
日々の食事をすることが大切で、
加熱非加熱は一般的な調理法であれば
気にしなくて大丈夫です。

非加熱や低温調理をすることで、
食材に含まれる「酵素」を取り入れ
活用することが出来ると言う説も
見聞きするかと思います。

一部には蛋白質分解酵素や
炭水化物分解酵素が含まれており、
消化の手助けになると言われますが、
外来の酵素は身体にとっては
「異種蛋白質」でありアミノ酸源
でしかありません。

調理過程で蛋白質を柔らかくしたり、
消化される前に
なんらかの作用をする可能性は
否定しませんけれども。

ですから一部で流行っている
「酵素ジュース」も基本的には
「糖がたっぷりのアミノ酸ジュース」
と言う解釈をされた方が
より事実に近い認識かと思います。

病院で処方される様な
消化酵素剤などは別です。

一方でビタミン類が
加熱により損なわれやすいので
効率的にビタミンを摂るには、
非加熱や低温調理が望ましい、
と言う側面はあります。

ですから、
「加熱調理料理だけ」
「非加熱調理料理だけ」
と言う両極端では無く、
適度に両方を取り入れた食事が
健康長寿の為には良いと思います。

最後に「プロテイン」と言う
サプリメントがありますが、
コレは食材から蛋白質成分を
高濃度に抽出したモノです。

蛋白質は英語でproteinと言います。
プロテインと蛋白質が別物と
認識しておられる方もいらっしゃったので、
念のため書いておきます。

蛋白質の消化吸収率はほぼ100%
と理論的には言われるのですが、
現実的にはかなり個人差があり、
50%程度或いはそれ以下の場合も
あるみたいです。

慢性的な蛋白質不足による
消化酵素生成低下や、
消化管筋肉の菲薄化などによる
消化機能の低下が原因かと思われます。

最近では
必須アミノ酸のサプリメントも
流行ってきています。
消化過程が不要ですので、
吸収率がとても高く
吸収速度も速いですので、
慢性的な蛋白質不足を改善させる
と言う意味で一時的に補助として
活用するのも良いのでは、
と思います。