【アブラについて2018その1−栄養素と脂肪酸−】

こんにちは!

ヘルスドクター
健康実践支援専門医師
宮崎 光史です。

突然ですが質問です。
「アブラ」と言うと
何を思い浮かべますか?

石油?
ガソリン?
揚げ物に使うオイル?
お肉の脂身やサシ?
お腹まわりについてるもの?

様々なモノがありますね。

アブラ全般については、
それだけで年間講義が出来るくらい
大変な分量になります。

今回は「健康に重要なアブラ」について、
かなり分かりやすくした形で
ご紹介したいと思います。

細かい構造式などは省きます。
慣れない用語もあるかと思いますが、
大きな形を理解して頂ければ
大丈夫です。

長くなってしまったんで、
今回は「その1」として
「栄養素としてのアブラ」
「脂肪酸の分類」
についてお話させて頂きますね。

このblogでは以前にも、
・必須脂肪酸
・オメガ3やオメガ6
についての記事がありますので、
そちらも参考にしてみて下さいね。

食事に含まれる栄養素

食事に含まれる栄養素には
何が含まれるかご存知ですか?

【3大栄養素】

・タンパク質
・脂質
・炭水化物(糖質と認識した方が良い)
※発見当時の技術ではこの3種類の検出が限界であり、
 これが食物中の全栄養素と認識されていました。
※身体構成成分としてタンパク質、脂質は必須栄養素です。
 タンパク質、脂質については個人差はありますが、一度の
 消化吸収量に限界があり、吸収出来ない分は排泄されます
 糖質はエネルギー源として重要ですが体内合成が可能で、
 「必須栄養素」では無い上にほとんどの人で消化吸収率が
 高く、余剰分は中性脂肪として蓄えられるので、
 適正量に留める必要があります。
※厳密に言うと、炭水化物=食物繊維+糖質ですので、
 「糖質」と言う方が正確ですが、
 栄養学上は食物繊維も含めた意味を持って
 3大栄養素「炭水化物」として表現されることはありません。

【5大栄養素:上記3つに以下の2つを加えた総称】

・ビタミン
・ミネラル
※技術の発展により検出可能となり、
 3大栄養素に加えて、
 微量ですがこれらが生命活動にとって
 大事と言うことが分かってきました。
※これらの存在や機能が特定されるまでは、
 ビタミン欠乏やミネラル欠乏は、
 風土病や感染症などと言われていたのです。

【7大栄養素:上記5つに以下の2つを加えた総称】

・食物繊維
・ファイトケミカル(植物栄養素)
※つい最近まで、食物繊維は
 「消化されない余計な残りカス」
 「便をかさ増しし便通を整える」
 程度にしか認識されていませんでしたが、
 腸内細菌叢を構成する細菌のバランスを
 整えたり、その細菌による代謝産物が
 腸粘膜の健康維持に役立っていることが
 分かってきています。
※更に、植物が厳しい環境に耐える為に
 創り出した物質(ファイトケミカル)に
 抗炎症作用や抗がん作用が
 認められることが分かり、第7の栄養素
 として研究が進められています。

上記の各栄養の詳細については
過去記事を参照して頂くか、
また別の機会にお話しますね。

食事に含まれるアブラ

さて、上記の様な食事に含まれる
栄養素のひとつである「脂質」ですが、
分子構造の特徴から大きくふたつの種類に分けられます。

・飽和脂肪酸
・不飽和脂肪酸

飽和脂肪酸

脂肪酸は炭素原子が
鎖状につながる構造をしていますが、
飽和脂肪酸は、
炭素同士の結合に二重結合が無いもの
です。特徴としては、
「常温で固体である」
「酸化しにくい」
です。

その炭素鎖の長さで
・短鎖(Short Chain):炭素が7個以下繋がったもの
・中鎖(Midium Chain):炭素が8-12個繋がったもの
・長鎖(Long Chain):炭素が13個以上繋がったもの
※統一基準が無く微妙に異なる定義もあります
と分類されます。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸は、
炭素同士の結合に二重結合があるもの
で、特徴としては
「常温で液体である」
「酸化する」
です。

不飽和脂肪酸については、
二重結合を持つ炭素原子が末端から何個目かによって
分類がありますが、食事と健康について話す際には、
以下の3種類が特に大切です。
ω3:炭素間二重結合が多い
  3種の中でもっとも酸化しやすい
ω6:炭素間二重結合が数箇所
  3種の中でやや酸化しやすい
ω9:炭素間二重結合がひとつ
  3種の中ではもっとも酸化しにくい
※ω(おめが)では無く、n-3と言う表記法もありますが
 意味は同じです。

生体内での脂肪酸

そして、ここからが大切なんですが、
生体内で常に「脂肪酸」単体で存在
しているわけではありません。

飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸も
動物においても植物においても生体内では
グリセリンに脂肪酸が結合した
中性脂肪(neutral fat)と言う形で
蓄積されることが多いです。

脂肪酸の結合数によって、
グリセリン+脂肪酸1個=モノグリセリド
グリセリン+脂肪酸2個=ジグリセリド
グリセリン+脂肪酸3個=トリグリセリド
が存在しますが、動物血液中には
ほとんどトリグリセリドしか存在せず、
中性脂肪≒トリグリセリドと考えても
病気や検査結果などを扱う場合には
問題ありません

トリグリセリドを構成する脂肪酸は一種類では無く
様々な組み合わせが存在します

ですから、動物性食品に含まれる中性脂肪にも
不飽和脂肪酸が含まれていたりするので、
どの様な環境でどの様な食事をした動物なのか
がとても大切になってくるわけです。

また、動物細胞の表面を構成する
細胞膜の構成成分は、「リン脂質」です。

グリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として
脂肪酸とリン酸が結合し、
さらにリン酸にアルコールがエステル結合した
構造を持っています。
理解できない方は無視して大丈夫です

簡単に言えば、
親水性のリン酸エステルに
疎水性の脂肪酸が2つ(同じモノとは限らず)
くっついた形です。

疎水性の部分を内側して二重構造を
取ることで、細胞膜の内面と外面は
親水性のリン酸エステルが並んでいます。
脂肪酸やアルコールには様々な種類があるため、
これもまた組み合わせが無数にあります。

そして、この二重膜の中に
タンパク質で出来た構造体が
埋まりこんでおり、
受容体、チャネル、ポンプ
などの様々な機能を担っています。

固定されたプラスチックの様な膜では無く、
柔らかなゼリーの様な膜の上を
かなり流動的に構造体が
動き回っている
イメージ
です。

「細胞膜がしなやか」
「細胞膜が柔らかい」
と言う言い方は、
この流動性が高く保たれている
と言うことを表しています。

健康診断でよく問題となる「コレステロール」
(厳密には問題となるのは運搬形態である
リポ蛋白との複合体)
ですが、この流動性のある
二重膜構造の安定化の為に
大変重要な
物質です。

コレステロールは、
他にもステロイドホルモンの材料
などとしても大変重要ですね。

細胞膜を構成している
リン脂質を構成する脂肪酸に

二重結合が多いほど、
(すなわちω3が多いほど)
炭素骨格が曲がっており
リン脂質同士の相互作用が弱まる為、
細胞膜の流動性がより高くなる
とされています。

この理由の他にも、
炎症のコントロールの為に
ω3とω6のバランスが重要に
なるのですが、
長くなりましたので、
とりあえず今回は
これくらいにしておきますね。

次回は「不飽和脂肪酸」
についてお話したいと思います。