脂質についての誤解

こんにちは!

ヘルスドクター
健康実践支援専門医師
宮崎 光史です。

・精製糖質の摂り過ぎは害
・蛋白質、微量栄養素(ビタミン、ミネラル)の十分な摂取
・脂質バランス補正

と言うことが食習慣において
大切であることは、
徐々に常識になりつつあります。

しかし、
脂質についてよく分からない、
と言う声もちらほら聞こえます。

ですので、脂質について
簡単に書いてみました。

より深く知りたい方は、
当ブログの過去記事を
参照してみて下さいね。

 

脂肪酸の分類方法

中性脂肪

食べ物に含まれる脂肪は、
中性脂肪と言う形態であることが
ほとんどです。

中性脂肪とは、
グリセロール1分子に対して
脂肪酸3分子が結合したモノです。

科学的に安定していることから
余剰エネルギーの保存形態として
多くの生物において存在します。

この構成分子としての脂肪酸は
炭素が連なった「炭素鎖」
軸に水素や酸素が枝の様に結合
しています。

不飽和脂肪酸

その「炭素鎖」の中に
二重結合が存在しており、
酸化する傾向のある脂肪酸を
「不飽和脂肪酸」と言います。

不飽和脂肪酸については、
末端から何個目の炭素分子に
二重結合があるかで、
ω(オメガ)3、6、9の様に分類されます。
化学的にはその他の数字のモノも
ありますが、生体内で重要なのは
この三種類です。

n(エヌ)3,6、9の様な
呼ばれ方もしますが、
同じ意味です。

脂質を研究する専門家は
最近はn-と言う呼び方を
好んでいますが、
一般的には古い呼称である
ω(オメガ)が一般的です。

 

飽和脂肪酸

脂肪酸を構成する炭素鎖に
二重結合がないモノ
飽和脂肪酸と呼ばれます。

飽和脂肪酸は、
その炭素鎖の長さによって、
・短鎖脂肪酸
・中鎖脂肪酸
・長鎖脂肪酸
の様に分類されます。

その境界については
一定のルールが存在せず、
文献や専門家により
細かい分類は異なります。

短鎖脂肪酸は、
腸内細菌による分解代謝産物
としてとても大切です。

中鎖脂肪酸は、
長鎖脂肪酸と比較して
肝臓へ直接運搬され
代謝されると言う特徴から、
速やかにエネルギー源と
なりやすいと言う特徴があります。

 

必須脂肪酸

そして、
体内で合成することが出来ない
体外から摂ることが必須の
脂肪酸があります。

ω3不飽和脂肪酸とω6不飽和脂肪酸です。

飽和脂肪酸とω9不飽和脂肪酸は
体内で合成が出来ると言うことです。

必須脂肪酸のバランス

そして、
ω3とω6については、
バランスがとても大切になります。

ω3:ω6=1:2-4
(何を目標にするかで1:2〜1:4と
報告により違いがあります)
が理想的と言われます。

しかし
多くの現代人は、
1:20-40とω6過剰
なのが現状です。

人によっては更にω6過剰な
場合もあります。

 

バランスが悪いことの問題

ω6が多いと何が悪いのでしょう?

ω3とω6は代謝経路に必要な
酵素が共通する部分があり、
ω6が多いと
体内で慢性炎症を起こし、
様々な症状や病気の原因となります。

逆にω3は
血液を固まりにくくするとともに
炎症を抑制する効果があります。

ですので、
ω3過剰となった場合にも
出血が止まりにくいなどの
問題が起こりますが、
実際は圧倒的にω6過剰が
ほとんどです。

ω3とかω6って具体的に何?

この様な質問もあります。

まず、
飽和脂肪酸は常温で固形
不飽和脂肪酸は常温で液状
と言う特徴があります。

そして、
流通する多くの
植物性オイルは液状であり、
ω6の含有量が多いです。

ω3の含有量が多いオイルは
非常に酸化がしやすいことと、
種類が少ないです。
・荏胡麻(エゴマ)
・亜麻仁(アマニ)
などが有名です。

他にもω3が含まれるモノとして
魚、特に青魚が有名です。

DHA(ドコサヘキサエン酸)
EPA(エイコサペンタエン酸)
と言う名称を目や耳にした
こと、あるのでは?

圧搾したり抽出した
ω3オイルは酸化しやすいので
保存方法や保存期間に
注意が必要です。

魚や荏胡麻、亜麻仁に
含まれている状態では、
その他に含まれる抗酸化物質
などの影響で比較的安定しており、
例えば焼き魚程度であれば
問題ないと言われています。

ω6は以下の様な植物性オイルに
多く含まれています。
・サラダオイル
・ベニバナ油
・グレープシードオイル
・ヒマワリ油
・コーン油
・大豆油
・ゴマ油

オイルの成分名は、
脂肪酸の固有名が
記載されていることが
多いです。

ω3は実は2018年12月現在
これだけあります。
(赤太字だけ気にしてもらえば大丈夫です)

α-リノレン酸 (ALA) 
・ステアリドン酸 (STD)
・エイコサトリエン酸 (ETE)
・エイコサテトラエン酸 (ETA)
エイコサペンタエン酸 (EPA)
・ドコサペンタエン酸 (DPA)
・クルパノドン酸
ドコサヘキサエン酸 (DHA)
・テトラコサペンタエン酸
・テトラコサヘキサエン酸 (ニシン酸)

ω6も実は2018年12月現在
これだけあります。
(赤太字だけ気にしてもらえば大丈夫です)
リノール酸
γ-リノレン酸
・エイコサジエン酸
・ジホモ-γ-リノレン酸
アラキドン酸
・ドコサジエン酸
・ドコサテトラエン酸
・ドコサペンタエン酸
・カレンジン酸

意識の高い企業では、
ω3やω6と言う記述を
しているところもあります。

そして、ω9不飽和脂肪酸は
必須脂肪酸ではありませんが、
ω6の代わりとすることで、
ω3とω6のバランス不良を改善
させる効果もあります

ω9は2018年12月現在
これだけあります。
オレイン酸
・エイコセン酸
・ミード酸
エルカ酸
・ネルボン酸

 

全てのオイルは様々な脂肪酸が入っている

脂肪酸についての
話には、上記の様な
不飽和脂肪酸の分類
についての話がありますが、
実はほとんどのオイルは
中性脂肪と言う形で
様々な種類の脂肪酸が
入り混じっています。

その中で、あくまで
ある種類の脂肪酸が
比較的多いと言う意味で
「ω3のオイル」
「ω6のオイル」
の様な表現をされることが
ありますが、それぞれ
ω3もω6もω9も
含まれています

ですので、
厳密にω3とω6の
バランスをコントロールするのは
かなり難しいです。

ただ、
意識するポイントは
あります。

ω3は
・亜麻仁(アマニ)、荏胡麻(エゴマ)
・魚
に多く含まれるので、
もし摂取量が少ないと思われる
場合には、それらを意識して摂る
あるいはサプリメントを
使う
と言う方法があります。

魚に含まれるω3の源
と言われている、
藻類サプリメントも有効です。

・クロレラ
・スピルリナ
・ユーグレナ(ミドリムシ)
・ナンノクロロプシス
と言うモノがあります。

この中では、
ナンノクロロプシスは
EPA含有量が多いので、
オイル補給としても良いですし、
アミノ酸バランスも良好です。

クロレラは細胞壁が厚く
消化吸収されにくいので、
その対策がされたモノを
選んでくださいね。

他にも、
オキアミ(クリル)も
ω3を多く含むので
有用です。

いずれにせよ、
必須脂肪酸はバランスが大切です。

そして、
酸化した不飽和脂肪酸は
過酸化脂質として
身体に悪影響を与えます
ので避けるようにしましょう。

揚げ物や炒めもの
(ほとんどω6と認識して下さい)
は酸化してないオイルを使っている
ことはもちろん、
食べる量が
多いと思ったら、
魚や上記の様なモノで
ω3を多めに摂るようにしましょう。

 

エネルギー源としての飽和脂肪酸

少し前に
・ココナツオイル
・MCTオイル
がメディアに
多く取り上げられました。

懐かしー!
あったあったー!
的な感想を持つ人も
いるかと思います。

また、
飽和脂肪酸に加えて
良質なビタミンEなども
含まれるバター
ギー(澄ましバター)
健康に良いとされています。

そして、それらを入れた
・完全無欠コーヒー(Bullet Proof Coffee)
・バターコーヒー
と言うモノも注目されました。

 

コレを飲めば脂肪が燃える!
コレを飲めば痩せる!
と言う誇大広告の様な
ことも言われてました。

しかし、ここに上げた
オイルやコーヒーは
あくまで
脂肪をエネルギー源とする
サポートをするだけ
なのです。

バターコーヒは効果なかった
完全無欠コーヒーは完全無欠では無い
と言う様なアンチ記事も
目にしますが、
大きな前提を忘れています。

これらはあくまでも
糖質制限をした際の
脂肪を分解したエネルギー源
ケトン体をより効果的に作り出す
為のサポート効果があるだけです。

 

言い換えると
・厳格な糖質制限
・十分な蛋白質摂取

・ミトコンドリア機能活性化の為の微量栄養素補給
が十分に出来てこそ、
これらの補助効果がでるわけです。

・糖質を過剰に摂り
・蛋白質や微量栄養素は少なめ
のままで
ココナツオイル、MCTオイルを
取り入れた場合には、
当たり前ですが
身体は糖質から生成される
ブドウ糖をエネルギー源にして
効率良くエネルギーが作れる
脂肪の利用は後回し
になります。

そして、
使い切れない過剰なブドウ糖は脂肪になり、
使われなかった吸収された脂肪酸も
脂肪になってしまうので、
単に太ってしまったり
エネルギー不足になるのは
当たり前なんです。

ですので、
ココナツオイルやMCTオイル
バターやギーを取り入れるなら
糖質制限と十分な蛋白質と
微量栄養素の摂取を意識した上で
行うことが前提条件となるのです。