医療大麻?医療麻薬?

こんにちは!

ヘルスドクター
健康実践支援専門医師
宮崎 光史です。

最近、「カナダで大麻解禁」
と言うことで記事にしました。

「麻薬」と同じ様なイメージが
強い方もいるかも知れません。

「医療用麻薬」と言うのもあり、
「医療用大麻」も同じなんですか?
的なことを言われる方もいます。

医療用大麻、CBDについて
書いてみました。

医療用麻薬は
鎮痛作用をメインとして、
他の薬剤で対処法の無い
末期がんの疼痛や難治性疼痛
に対して医者が処方しています。

しかし正常な人が使うと、
精神錯乱や幻覚・幻聴を来たし、
かつ強烈な依存性を示すなど
の問題があります。

疼痛緩和目的に使用する場合は、
依存性などの副作用は無い
と言うのが共通認識となっています。

では、麻薬とは別にして
麻にはどんな成分が
あるのでしょうか?

麻の成分

麻に特有の成分は
カンナビノイド
と総称され、60種程度が
同定されています。

その中で、
お酒に酔った様な酩酊症状、
精神作用を引き起こすのが
テトラヒドロカンナビジオール(THC)
です。

ただ、精神作用とは言っても、
日本では「幻覚、妄想、錯乱」を来す
として政府が啓蒙活動をしていますが、
アルコールと近似した
酩酊感・倦忘感がメインで、

幻覚・妄想を呈することは無い
と言うのが国際的な見解です。

 

中毒性、習慣性については
国際的な規制の影響で
大規模な正式の研究は
無いのですが、
アルコールやタバコより安全
カフェイン程度の依存性

と言う説もあります。

そして、THCとは別に
カンナビジオール(CBD)
と言う成分があります。

この成分がもたらす効果が
今まで治療法が無かった
難治性の症状に有効と言う
ことで大変注目されています。

そして、CBDは精神作用を
引き起こさないのです。

THCとCBDの体内での作用

では、どうして
THCやCBDが人体に
作用を及ぼすのでしょうか?

麻抽出成分は規制の影響で
研究はかなり少ないのですが、
化学合成されたCBDを利用し
研究している人達がいます。

1980年代に
「カンナビノイド」(麻に特異的な成分)
に特異的に結合する受容体が
見つかり、CB受容体と
称されました。

そして、その受容体にも
種類があることが分かり、
CB1:神経系細胞に多く存在
CB2:免疫系細胞に多く存在
が現在までに同定されています。

THCはCB1受容体に強い親和性があり、
精神作用を引き起こす原因とされています。

CBDはCB1受容体に親和性がほとんどなく、
精神作用は無いと言われています。

そして、CBDについては、
抗悪性腫瘍効果に加え、
痙攣、不安神経症、炎症、嘔吐などの緩和
統合失調症に対する抗精神病効果
が報告されています。

エンドカンナビノイドシステム

では麻に特有の成分(カンナビノイド)
に結合する受容体がなぜ体内にある
のでしょうか?

カンナビノイドに類似した構造を持ち
CB受容体に結合する人体内の分子、
内因性カンナビノイドリガンド(エンドカンナビノイド)
の検索がされており、1990年代に
・N-アラキドノイルエタノールアミン(アナンダミド)
・2-アラキドノイルグリセロール
の2種類が報告されています。

ただ、アナンダミドは
体内濃度が極めて低く
本来のカンナビノイド受容体への
リガンド(結合相手)かどうかは
疑問視する声もあります。

そして、地球上で生きていくために
本来備わっている身体調節機能として、
エンドカンナビノイドシステム(ECS)
があると言うことが提唱されています。

ECSは、
食欲、痛み、免疫調整、感情抑制、
運動機能、発達と老化、神経保護、
認知や記憶の調整などの機能をもち、
細胞間情報伝達を調整している
と言われています。

最近の研究では、
・外部からの強いストレス
・加齢に伴う老化
によってECSの働きが弱ると、
様々な疾患になると言う仮説
も出てきています。

CBDは、
全身にあるCB2受容体に
直接的に働きかけることで、
本来のECSのバランスの取れた
働きを取り戻すことが出来る
として注目されているのです。

日本でCBDを利用する際の注意点

少なくとも日本では、
治療用医薬品/サプリメント
としては
認められていません。

加えて、「大麻取締法」への
注意が必要です。

「カナダで嗜好用大麻解禁」
の記事でも書きましたが、
この法律では「成分規制」
では無く「植物規制」
されており、
「麻の穂、葉、根の所持や加工」
が禁止されていますが、
「茎と種」は対象外です。

ですから極端な例え話ですが、

「化学合成されたTHC」を所持していたとしても、
「大麻取締法」対象外ですが、

「麻の葉や根から抽出されたTHC freeのCBD」
は取締対象となる

と言うことです。
(実際に化学合成THCを所持した場合
無罪放免となるかは別の話になりますが)

ですので、
サプリメントとしてのオイルなどを
個人輸入などをする際には、
「天然ならばどの部位から抽出されたのか」
「完全合成なのか」
が現法令下で重要になります。

そして、利用する際には
精神作用をきたす「THC」が
含まれていないことが
確認出来ない
ものは
使用しない
方が良いかと思います。

CBDの臨床応用については、
まだまだ利用経験集積や
研究が必要です。

もし必要な場合は、
上記のことを最低限
知った上で慎重に
行動しましょう。