マイクロプラスチック

こんにちは、Dr.Kです!

マイクロプラスチック問題が
結構話題になっていますね。

プラスチック問題も含めて
ちょっと書いてみたいと思います。

プラスチックとは?

ザックリと「プラスチック」と
総称されていますが、
何を指すかと言うことは、
意外と曖昧なことが多いです。

英語のPlasticと言う単語は
ギリシャ語のPlassso (成形する)と -ikos (〜の)から
出来たplastikos(成形できる)と言う単語が語源
とされています。

「土を捏ねて形を作り上げること」
と言うのが本来の意味ですが、
「自由な形に出来る物質」
と言う意味合いを持つようになったんですね。

・可塑性のある(自由に形を変えられる)
・柔らかい
と言う意味から
・性格が柔軟、感受性が高い
と言う意味にもなります。

・ニセモノ
・人工的な
・不自然な、美味しくない
と言うネガティブな意味や
・(美術で)造形
・(医療で)形成
と言う意味もあります。

原油を原材料とした石油化学製品が
19世紀に出てくると、
それを用いたモノを指す様になりました。

実用化された最初のプラスチック樹脂は
1870年に米国の印刷工ジョン・ハイアットが
偶然発見した硝化綿に樟脳を加えて作る
「セルロイド」と言われています。

米国英語では
・ポリ袋(ビニール袋)
・クレジットカード
もplasticと表現されます。

ちなみにVinylは専門用語的な使い方か
LPレコードを指す単語として使われ、
塩化ビニル樹脂やポリビニル◯◯や
その他の石油化学製品はすべて
plasticと表現出来ます。

石油化学製品としてのプラスチックは何が問題なの?

石油化学製品が実用化された当初は
大変な歓迎ぶりだったと言います。

それまでには無い
カラフルな色づけが自在に出来、
様々な形に安価で成形出来る夢の素材。

ところがその素材の中には、
体内の性ホルモンなどと構造が似た
物質が不適切な利用法をすることで
溶出することが指摘されると、
「プラスチック=ホルモン撹乱、不健康」
と言うイメージが出来る様になりました。

有名なのが
・ポリカーボネート樹脂
・エポキシ樹脂
・ポリ塩化ビニル

などをより成形しやすくする為に
使われる
ビスフェノールA (bisphenol A, BPA)
です。

・食品パッケージ内側コーティング
・飲料缶内側コーティング
・缶詰内側コーティング
・エポキシ塗料
などに使われています。

あまりに便利な為に多様な使われ方をしており、
BPAを完全に避けるのは不可能とも言われます。

実際にカナダ政府の発表では、
2007年から2009年の間に行われた研究で、
6歳から79歳までの人口の91%の尿から
BPAが検出されたと言います。(Statcan 2015

その他にもまだまだ危険性が指摘されていない
プラスチック製品の素材や添加物質は
多いと思いますので、BPAを材料として
応用可能な知識を書いてみたいと思います。

BPAを含めた「ホルモン様物質」への対策法とは

じゃあもう現代社会に生きてる限り
避けられないなら無理じゃん!
と思ってしまうのも無理ないです。

しかし
可能な限り対策すること
は出来ます。

【BPAフリー(BPA不使用)表記
を確認して石油化学製品を購入する。】
と言うのもひとつです。

ちなみに
Plastic BottleはBPA溶出の危険あり
として避けるべきとする意見などもありますが、
少なくともPETボトルに使われている
ポリエチレンテレフタレートは

そもそもBPAを加える必要が無いので、
素材的にBPAフリーである
ことは認識しておきましょう。

もちろん、利用用途に伴う添加剤が
害を及ぼす可能性は否定できませんし、
「電子レンジ加熱OK」ボトルも出てきており、
加熱に伴う添加剤溶出なども注意する必要は
あるかと思います。

【容器やラップの原材料表記を確認する】
と言うのも極めて有効です。

容器は可能な限り
ガラス製や陶器製などの
安全性の高いモノを使う
のが望ましいですが、
安全性の高い素材のモノを
適正に利用するのであれば、
樹脂製容器も活用されて
良いのでは無いかと思います。

芸術作品や工芸品とされている
皿や容器の場合には、
食器に認可されていない
有害物質を含んだ塗料が
利用されていることもあるので
ご注意ください。

海外のやたらカラフルな
お土産品店のお皿などは
注意が必要です。

そして食品用ラップは開発当初は
ポリ塩化ビニル(PVC)製でした。

PVCは加熱による
特に脂っこい料理や肉、チーズの様な
モノへの可塑剤移行
が大きな問題として
指摘される様になりました。

現在売られているラップは
Polyethylene 製が多いですが、
PVCBPAを含むモノもあるので、
100%polyethylene を確認した方が良いでしょう。
安価な商品は特に注意して下さい。

ただ、100%polyethyleneの製品は
表面加工などに工夫をしたものでないと、
容器への密着が良くないのが難点なのですが、
商品によってはしっかり密着する様ですので、
気になる場合は確認してからお使いください。

そして最も大切なのが
【適切な利用法を守る】
と言うことです。

そもそも可塑剤の食品への移行は
・想定以上の長時間の食材との接触
・想定以上の高温化での食材との接触
により問題となります。

アメリカ合衆国農務省
USDA (United States Department of Agriculture Food safety and inspection service)が
ラップ製品を電子レンジ加熱する際の
指針を公表しています。

「ガラス、陶器、そしてプラスチック製の皿や器は
必ず電子レンジ使用可(Microwave safe)と書かれたものを使う。」

「マーガリンの容器やレストランでの持ち帰り用の箱や入れ物など
プラスチック製の容器は電子レンジに入れてはいけない。
これらの容器は変形したり溶けてしまい、
体に害のある毒素が食べ物に移ってしまう可能性がある。」

「電子レンジ使用可のサランラップ、ワックスペーパー、
調理用バッグ、クッキングペーパー、ペーパータオルは安全である。
しかし、
電子レンジで温めている間は、
サランラップが食べ物に触れないように気をつけること。」

「電子レンジ使用可能と書かれていない、
ビニール袋やジップロックバッグ、
そして茶色い紙袋やスーパーのプラスチック袋は
決して電子レンジで使用しないこと。
新聞やアルミフォイルもダメ。」

「電子レンジ利用可」のラップであっても、
料理や食材に触れない様な使い方をすることが
前提の商品である
と言うことです。

どうやって使えばいいの?
と思いますよね。

ガラス製あるいは陶器製の容器へ
入れることが前提であり、
フチまで目一杯に食材を入れずに
多くても8分目程度までにし、
外気を遮断する為にかぶせる。

そして電子レンジ加熱の際には
ふんわりとかぶせて一部穴をあけるか
ずらして加熱時の蒸気による破裂を避ける
様な使い方が想定された商品なのです。

ここでは電子レンジ自体の安全性については
議論の対象とはしません。

電子レンジを使わない
蒸し調理や茹で調理の時に
ラップやジップロックの様な
袋型の
石油化学製品を使う場合も
直接食品と触れているかどうか

同様の注意が必要です。

素材や適正利用法のチェックは
必要ですし、
どこまで気をつけるかは
あなた次第ですが。

ラップで直接食材を包んで電子レンジ調理する
あるいは
ラップで包んで熱々の炊きたてご飯でおにぎりを作る
と言う行為も
高温で食材と触れることにより
可塑剤移行の可能性があるので
避けた方が良いでしょう。

握った後に冷めたおにぎりや
朝作ったサンドイッチなどを
ラップで包んでお昼に食べる
くらいの使い方であれば、
問題はほとんど起こりません
気になる場合には
安全な素材のワックスペーパーなど
で包んだ上から包むのが良いでしょう。

そして適切な容器が無いから、
あるいは皿洗いの手間が省けるからと
長期間直接ラップで包んだ食材を
冷蔵庫や冷凍庫に入れておくのも
オススメ出来ません。
直接接触しない使い方
が前提であることを覚えておきましょう。

マイクロプラスチックとは?

やっと本題のマイクロプラスチックが
出てきましたね。(笑)

石油化学製品はとても便利で
世界で多用されていますが、
自然に分解されない性質の為、
ゴミとして廃棄された物が
海洋汚染などを引き起こしている
として大きな環境問題となっています。

ところが最近、
プラスチック製品が細かく
破砕され5mm以下となった破片
「マイクロプラスチック」として
注目される様になりました。

そして様々な個人や団体が
調査を開始していますが、
そもそも利用するフィルターが
統一されておらず、
それにより検出量が地域により
かなり異なっていることも
指摘されています。

このマイクロプラスチックは
前記した様に可塑剤として使われる
成分のホルモン様作用の影響や
プラスチックが身体に蓄積されて
しまうのでは無いかと言う
漠然とした恐怖や不安から
注目されています。

しかし現時点では詳細な害は
ハッキリしていないのが現状で、
世界保健機関(World Health Organization WHO)も
高い注目に伴って2019年8月22日に
マイクロプラスチックに対する報告書を
提出しています。

その中で
「大小様々なプラスチック片のほとんどが
体内へ吸収されずに排出される」
と言う研究結果を示しており、
適切な下水処理の徹底で
マイクロプラスチックの9割以上は
除去出来るはずとも言っています。

また驚くべきことに
北極の雪や空気中にも
マイクロプラスチックが検出されている
と言うことで、
大気汚染物質として注目されている
PM2.5(2.5μm以下の粒子状物質の総称)
と同様に注意する必要があります。

と言うのも5mm以下のモノでも
消化管であれば排泄されますが、
空気中に浮遊する様な微粒子の場合
呼吸器内に長期間貯留することで
慢性肺炎の様な
害を及ぼす可能性が
否定できない

からです。

そしてWHO報告書は
・これまでの研究ではデータ不足であり更なる研究が必要
・健康にとってマイクロプラスチックがどの様な意味を持つのか、今後数年間で知見が得られることを期待している
としています。

つまり
現状も長期的影響もよくわからん
と言うことです。

もし
訳知り顔にマイクロプラスチックの害を
主張している人を見つけた場合には、
是非世界の人々の健康の為に、
WHOに連絡すること
をオススメしましょう。

その論拠や研究データが
今後の知見の礎になる
かも知れません。