血管系の病気は防げるのか?
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
2023年2月22日に
落語家の笑福亭笑瓶さんが、
大動脈解離にて亡くなりましたね。
血管系の病気のほとんどは、
コレと言う前兆の様な自覚症状が無く、
「前触れなく突然起きた」
「昨日まで元気だったのに」
と言う感じの事が多いです。
しかし実のところ発症するかなり前から
とある病態が体全体の血管で進行し、
それが最終的に破綻して起こる、
と言うケースが多いです。
笑福亭笑瓶さんの死を無駄にしない為に、
血管系疾患を予防する為の基礎知識を
まとめてみました。
その病態とは
「血管の微細傷害に伴う慢性炎症」と
それに伴って進行する
「動脈硬化」です。
健康診断でチェックされる生活習慣病
「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」
はこの病態が進行しつつある中で、
起きている合併症の様な存在だ、
とも言われたりします。
なぜこの病態が起こるのでしょうか。
その根本原因に対処せずに、
薬剤で血圧、血糖値、コレステロール
などを低下させるのは、
進行をある程度緩やかにする効果は
あるかも知れません。
しかしアクセルを緩めずに
ブレーキをかけ続ける様な事ですから、
生命の危険を回避する一時凌ぎ、
としては仕方のない事ですが、
長期間続ける意味はありません。
むしろ薬の長期利用による弊害も
結構あったりします。
「動脈硬化」と言う病気には、
「粥状硬化」と言う
血管壁にコレステロールが沈着して
内腔が狭くなっていく現象と、
「石灰化」と言う
血管壁にカルシウム成分が沈着し、
弾力性が無くなっていく現象が
混在しています。
粥状硬化の原因として
最近注目されているのが、
「血糖値スパイクによる血管の微細傷害」
です。
食事すると食後に血糖値が上がり、
その後インスリンが分泌され、
細胞内にブドウ糖が取り込まれ、
血糖値は低下します。
コレはスパイクとは呼びません。
精製された炭水化物や糖を食べると、
より急激に血糖値が上がり、
それに伴いインスリンが多く分泌され、
急激に血糖値が下がります。
コレが「血糖値スパイク」です。
血糖値の乱高下、とも言われます。
コレが継続的に繰り返されると、
インスリンの効きが悪くなってくる、
「インスリン抵抗性」が強くなり、
最終的には糖尿病になります。
それがなぜ血管に関係して来るの?
と多くの方が思われるでしょうが、
実は血糖値スパイクにより、
血管内皮細胞から多量の活性酸素が発生し、
内皮細胞が傷害されることがわかってます。
そしてそれを修復する為に、
肝臓がコレステロールを作り、
全身に送られ、
修復の為に血管壁に取り込まれます。
コレが「高コレステロール血症」で、
進むと粥状硬化になります。
「コレステロール値が高い」
と言うのは炎症や傷害による
組織破壊の結果なんですね。
血糖値スパイクが起こる食事は、
ビタミン・ミネラルが不足します。
その中でもマグネシウムは、
血管を広げる作用とともに、
乳製品や加工食品に含まれるリンを
複数食品から過剰に摂る影響による
組織石灰化を抑制します。
精神を安定させリラックスさせる
効果もあるので、
現代人の多くで不足している
マグネシウムは意識して摂ると
メンタルの安定や睡眠の質の向上にも
良いと思います。
マグネシウムは、
魚介類や海藻類に多く含まれます。その他にも、
穀類、野菜類、豆類、香辛料などにも
含まれていますが、
加工食品に含まれるリン酸塩により、
吸収が阻害され排出が促進されます。
マグネシウム不足とリン過剰は、
上記の様な機序から高血圧症状に
大きく影響しています。
過剰なリンは骨や歯から
カルシウムを溶け出させて、
様々な組織の石灰化を促進させますので、
血管の石灰化を抑える為にも、
リンを摂り過ぎない注意は大切です。
朝食を抜くと3食時より
昼食後の血糖変動が大きくなる、
と言う事で朝食を食べる方が良い、
と言う主張もありますが、
個人的には
血糖値が上がる物を口にする
回数が増える方が血管傷害は
酷くなる様に思います。
例えばですが朝食に
サンドイッチと野菜ジュースを摂り、
血糖値スパイクを起こした上で、
休憩時間に加糖缶コーヒーなどで
またスパイクを起こして、
その後に昼食を食べるならば、
多少スパイクは大きくなっても、
昼まで血糖値を上げない方が、
良いと言う事です。
食べない時間を設ける事で、
インスリン抵抗性が改善する、
細胞内の老廃物のオートファジーが活性化し、
ミトコンドリア機能も活性化する、
と言う事も言われていますので、
睡眠前後3-4時間は、
血糖値を上げる様な物、
特に固形物は食べない様にする、
と言うのも良いです。
妊産婦の方や成長期のお子さんは、
1日1-2食で十分な栄養を摂る事が
難しいとも言われますので、
無理に1-2食にする必要はありません。
1日3食でも1-2食でも、
なるべく血糖値変動を抑える、
血糖値変動の回数を減らす、
と言う事が大切です。
糖質は1食当たり
米なら1/2膳、麺なら1/2玉程度に
控えましょう。
それに合わせて野菜や肉・魚などは、
少し多めに摂る様にした方が良いです。
食物繊維を豊富に含む野菜を最初に食べると、
糖の吸収が穏やかになります。
また抗酸化作用や強い色素成分を多く含む、
色の濃い野菜を食べる事も、
血管傷害の軽減が期待できます。
加えて蛋白質や脂質を
炭水化物の前に食べることで、
インクレチンと言う
ホルモン群が小腸から分泌され、
インスリンの効きを高め
血糖変動を抑えます。
とは言え変化を穏やかにするだけで、
たくさん食べてしまった場合には、
余剰分は中性脂肪に変換され、
内臓脂肪、皮下脂肪、肝臓周りに
蓄積されていきますので、ご注意下さい。
完全植物食であれば、
糖質制限は必要無いと言う主張もありますが、
糖質過多になれば悪影響はありますし、
完全植物食は蛋白質が少ない傾向があります。
適切な蛋白質量については諸説ありますが、
ご自身の体調に合う様な量を見つける、
と言う事が大切だと思います。
動物性脂肪は血管に悪い、
と言う事もよく言われますが、
血管の弾力性を保つ為に必要です。
完全菜食に近い食事の人は、
動脈硬化に伴う梗塞のリスクは減りますが、
血管壁が弱くなり出血性疾患のリスクが高い、
と言う事も指摘されていますので、
適度に動物性食品を摂取した方が、
健康と言う意味では良いと思います。
果糖は血糖値を上げないので健康的、
と思われている方もいますが、
肝臓で代謝され中性脂肪などに変換されるので、
摂り過ぎには注意が必要です。
自然な果糖が含まれる果実には
健康に良い栄養成分も多く含まれますので、
他の食事と一緒に摂るのは避けて、
間食などに生の果実だけを適量食べる方が、
良いと思います。
ショ糖(砂糖)や異性化糖などにも
果糖は含まれていますので、
加工食品や清涼飲料水の摂り過ぎには、
気をつけましょう。
異性化糖と言うのは原材料表記では、
果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、
などと書かれる事が多いです。
血糖値を上げない甘味料もありますが、
甘味刺激があるのに血糖値が上がらない、
と言う事でより食欲が高められたり、
と言う悪影響も指摘されていますので、
積極的に日常的に使う事はやめましょう。
食後に軽く散歩の様な運動をする、
と言うことも血糖変化を抑える、
と言う事も分かっています。
栄養指導や体重管理の際に、
カロリー計算が行われる事も多いですが、
近年では運動や食事に関わらず、
体の総消費カロリー量はほぼ変わらない、
と言う事も分かっています。
運動の消費カロリーと言うのも、
酸素消費量からの推測ですが、
違う種類の運動を比較する際には、
意味がありませんし、
食材の完全燃焼が前提の
摂取カロリーと比較しても無意味です。
何をどれくらい食べたのか、の記録と、
体重や体脂肪率などの体組成の記録で、
自分の活動量と食事量のバランスを
調節する様にするのが一番良い様です。
適度な運動はストレス解消だけでなく、
総消費カロリーの中の代謝バランスを
より健康的にする効果はありますので、
運動自体が無意味ではありませんが、
「運動だけ」で体重は減らせません。
上記の様に、
血糖値スパイクとインスリン抵抗性に
注目した食習慣の改善は、
生活習慣病と呼ばれる、
糖尿病、動脈硬化、脂質異常症を
改善させる事が期待できます。
健康の為の食事法や栄養理論は
様々な仮説が多々ありますが、
万人に共通する理論はありません。
生まれ持った性質により違いますし、
時や環境によっても最適解は変化します。
自分の心身と日々向き合う時間を取り、
対話をする事で何が最適解なのか、
自分自身に問いかける事も大切です。
笑福亭笑瓶さんの様な悲劇を減らす為に、
あなたも出来ることから少しずつ
意識して改善していきましょう。
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