【大流行しつつあるヘルパンギーナとは-こどもの夏風邪-】

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

ここ数日で多くの都道府県で、
警報レベルの感染者が確認されたとして、
話題になっている「ヘルパンギーナ」。

【ヘルパンギーナとは】
ヘルパンギーナとは
発熱と口腔粘膜の小水疱を伴う発疹、
それに伴う痛みが特徴の疾患です。

元々はラテン語由来の
「herpes ヘルペス」=「水疱」
「angina アンギーナ」=「締め付けられる様な激痛≒扁桃腺炎」
と言う単語を使った造語で、
「扁桃腺炎を伴う水疱性疾患」を
「ヘルパンギーナ」と呼ぶ様になりました。

anginaって狭心症とか胸痛のことじゃないの?
と言う方は英語に詳しい方ですね。
俗称としてanginaだけで呼ばれますが、
狭心症はangina pectorisと言うのが正式で、
ラテン語のpectus「胸」を付けます。

【流行りやすい季節と年齢】
流行するヘルパンギーナのほとんどは、
「ピコルナウイルス科エンテロウイルス属」に分類される
A群コクサッキーウイルス
によることが多いとされます。

ピコルナウイルス科エンテロウイルス属には、
・ポリオウイルス
・A群コクサッキーウイルス(CA)・B群コクサッキーウイルス(CB)・エコーウイルス・エンテロウイルス(68型~72型)
などがあり、
A群コクサッキーウイルス以外でも、
ヘルパンギーナが起きることもあります。

原因ウイルスがひとつでは無いので、
ヘルパンギーナを何回も繰り返すことも
不思議ではありません。

ポリオウイルス感染症は発症した人の中に、
片側性の急性弛緩性麻痺や急性灰白髄炎が
起こることがある為に、
ワクチンが開発されていますが、
ヘルパンギーナ全般に有効なワクチンは
2023年現在存在しません。

基本的に夏に流行し、
感染者のほとんどは4歳以下で、
1歳代がもっとも多く、
ついで2歳、3歳、4歳、0歳の順で多い
と言われています。

類似した疾患に「手足口病」があります。
手足口病もエンテロウイルス属ウイルス感染症で、
喉や手足、お尻、ひざなどに水疱性発疹ができますが、
あまり熱は高くなく軽症のことが多いです。

また、
ヘルパンギーナや手足口病のような
特徴的な水疱性発疹や扁桃炎がなくても、
夏のこどもの熱性疾患のほとんどは、
エンテロウイルス感染症と言われています。

【感染経路と症状】
くしゃみや唾液、便飛沫を通じて、
飛沫伝播、接触伝播、糞口伝播が起こる、
と言われていますが、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で
指摘される様になったエアロゾル(マイクロ飛沫)感染も、
おそらく起きていると思います。

特に幼稚園や保育園では乳幼児間での接触が多く、
集団発生することが多いです。
ですから発熱を確認したらすぐ保護者に連絡し、
引き取ってもらうことになっているんですね。

主な症状
感染後は2-4日間の潜伏期間があり、
その後に発熱に引き続いて、
喉の上側(軟口蓋、口蓋弓)に直径1-2mmの、
中心部に小水疱水を伴った赤い発疹が
出てきます。
水疱が破けると浅い潰瘍となり痛みます。

2-4日間程度で発熱は落ち着き、
解熱後にやや遅れて粘膜疹も消失します。

手足口病の場合は
手掌、指の間、足の裏、口の中、膝、お尻など
に水疱性発疹がみられます。
発熱も約3分の1の人に出現しますが、
あまり高熱にならないことが多いです。

ヘルパンギーナ、手足口病および
夏風邪といわれるエンテロウイルス感染症は
ごく稀に重症化することもあり、
・髄膜炎(強い頭痛、 嘔吐)
・脳炎(意識障害、ふらつき)
・急性心筋炎(著しい顔色不良、胸痛、呼吸困難)
などを起こすことが知られていますので、
単なる夏風邪と油断せずに、
注意深い経過観察が必要です。

【治療法・鑑別診断】
風邪の多くはウイルス感染ですので
特効薬はありません。
もちろん細菌に対する抗生物質は無効です。

・喉が赤くなり膿がつくような、
咽頭炎・扁桃炎のとき(溶連菌感染疑い)
・気管支炎・肺炎
などの場合には例外的に
抗生剤が有効なこともあります。

喉の痛みなどから水を飲みたがらなくなり、
脱水を引き起こしてしまわない様に、
こまめに水分を飲ませる様にしたり、
無理に熱を下げずにしっかり保温してあげて
ウイルスの活性を抑え免疫機能が活性化するのを
サポートする様にします。

食欲が無い場合は
無理に食べさせなくて大丈夫ですが、
汗でミネラル分が喪われるので、
経口補水液や果汁などを飲ませるのも
良いと思います。

どうしても辛そうな時には
解熱剤を使っても大丈夫ですが、
ウイルス感染に対抗する為に
必要があって発熱していることは
忘れない様にして下さい。

初期はウイルス感染症だったのが、
うまく痰などが出せずに肺や気管支に溜まり、
二次的に細菌感染が起こり、
肺炎・気管支炎などとなることもあります。

咳がよく出る場合には、
温かいシャワーを出しっぱなしにして
加湿したお風呂場などで、
抱っこしながら軽く背中を叩いたりする事で、
排痰を促してあげるなどして、
そうならない様に努めましょう。

また咽頭痛や扁桃炎が無い小児の発熱には、
「尿路感染症」もあり得たりします。
発熱を伴う尿路感染症は腎盂腎炎を起こし、
「菌血症」となり重篤化する場合もあります。
喉の腫れや発疹の無い発熱の場合、
・機嫌が悪い
・おなかや背中を痛がる
・おしっこのときに痛がる
などの所見がある場合には、
病院受診をする様にしましょう。

・尿がいつもよりくさい
・尿が赤い、尿に血液が混じる
といったことも起きる場合がありますが、
ハッキリしない事も多いです。

【登校・登園の判断】
エンテロウイルス感染症の場合、
急性期に最も多くウイルス排出が起こり
感染力が強いですが、
回復した後でも2-4週間にわたり、
便からウイルスが検出されることも
知られています。
抗体が出来ていれば感染力は無いはず、
とは思いますけれども。

ですから急性期のみの登校登園停止による、
学校・幼稚園・保育園などでの
厳密な流行阻止効果は期待できません。

とは言えエンテロウイルス感染症は
基本的に軽症の疾患である為に、
登校登園についての判断も、
流行阻止よりは患者本人の状態で
判断すべきとされていますので、
多くの小児科では、
完全に解熱し食事が摂取できれば、
登園・登校は可能とする場合が多いです。

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