常在ウイルス叢ってご存知ですか?

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

健康を意識し始めると、
腸活、腸内細菌叢と言う言葉を
目にし始めるかと思います。

中には病原性を持つものも
あったりしますが、
病原性が無く身体に良い働きをする
細菌とうまくバランスを取ることで
病原性が出ない様に調整されています。

その為には維持したい
腸内細菌叢のバランスに合った
食事内容にすることが大切です。

コロナ禍になって以来、
ウイルスの病原性ばかりが
目につきますが、
実はウイルスも特定の動物に対しては
病原性をほとんど発揮せずに、
共生関係とも言える様な形で
常在していることが分かっています。

そして人獣共通感染症として
知られている感染症の多くが、
豚や鶏などの体内で無症状感染で
増殖するモノが多いです。

では人間の体内で
症状を起こさずに増えるウイルスは
存在しないのでしょうか。

ほんの少し前までは、
「存在しない」と言うのが
通説であり常識でした。

しかし2020年に
東京大学医科学研究所の論文で
健康な人の体内において、
51ヶ所の組織における
網羅的遺伝子解析を行ったところ、
少なくとも39種のウイルスが、
常在感染していることが報告され、
ウィルス叢(Virome)を形成している
可能性が示唆されているのです。
https://www.amed.go.jp/news/release_20200604.html


また2014年にNatureに
掲載された研究によると、
マウスの腸内に存在する
マウスノロウイルス(MNV)の
様々な株を持続感染させると、
腸の形態やリンパ球の異常や、
感染や化学物質により損傷を受けた
腸への有害な影響が解消されました。
https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/58630

これらのことから、
ヒトの体内に常在しているウイルスが
常在菌や組織細胞になんらかの影響を
与えていると考えるのは自然なことです。

ただし常在ウイルス叢と言う概念は
2020年に示唆されたばかりですので、
ヒトでの研究は報告されるレベルには
無いのが現状です。

女性が子供を育てる時に重要な
胎盤を形成する為に必要な遺伝子も
ウイルス由来であることが分かっており、
ウイルスは生物の進化にも
少なくない影響を及ぼしているのは
間違いのない事実です。

ただ単体では単に遺伝子と蛋白質の塊で
生命活動を営まないという事で、
生命では無いと言う扱いもされて来ました。
現在では生命の一形態と見る専門家も
いたりしますけれども。

常在細菌叢についても、
まだまだ理解が追いついていませんが、
常在ウイルス叢については、
ほぼ理解がされていないのが現状です。

マウスの研究の様に、
常在ウイルス叢が細菌叢に働きかけ、
なんらかの影響を与えることも
十分あり得る事ですから、
今後の研究がとても楽しみですね。