ノロウイルス感染症について

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

冬になると牡蠣を食べることが増え、
ノロウイルス感染による
嘔吐下痢症も増えたりします。

しかし実は過去10年間の
ノロウイルス感染症の原因の
90%以上は「牡蠣以外」が
原因だったりします。

と言うことで
今回はノロウイルスについて
少し書いてみたいと思います。

【食中毒とノロウイルス】
食中毒患者の約半数が、
ノロウイルス感染症であり、
腸管内で増殖して嘔吐下痢、
腹痛などを引き起こします。

体力の少ない乳幼児や高齢者は、
脱水や吐物による窒息を起こし
亡くなることもありますが、
通常の成人であれば死亡リスクは
低い感染症です。

【ノロウイルス感染の原因とは】
ではノロウイルス感染の
主な原因とはなんでしょうか?

1.手洗い不足
感染者の吐物や便の飛沫が付着した
公衆トイレを利用した後に、
直接/間接的に触れた後に、
口などを触ることで感染します。
電車の吊り革などからも
ノロウイルスが検出されています。

そして冬季に発症者が増える原因は、
「水が冷たいから手をしっかり洗わない」
と言う人が増えるからだと言われています。

手洗わずに素手で食べ物を摘んで
食べたりすることや、
調理や配膳する人の手が汚染されている
ことで料理が汚染されることも。

ケーキが原因の場合も報告されています。

ちなみにアルコール消毒剤は、
脂質膜であるエンベロープを持たない、
ノロウイルスには有効では無いです。
次亜塩素酸で感染力を失わせることが
出来ますが、有機物と迅速に反応し
無害化する性質があるので、
汚れを取り除いてから環境表面に使う
ことが必要ですし、
手指表面の消毒には向いていません。

2.ウイルスを濃縮した二枚貝を加熱不十分で食べた場合
実はノロウイルスは
「人の腸管内でしか増殖出来ない」
と言う事実があります。
口から入った後で12-48時間かけて
増殖してから嘔吐下痢症を起こします。

牡蠣をはじめとする二枚貝は、
毎日100L単位の海水を出し入れし、
栄養補給や呼吸をしています。

その間に海水に含まれる
ノロウイルスを濃縮してしまう
傾向があるんです。

牡蠣だけで無くアサリやシジミなども
ノロウイルスを濃縮しますが、
生食することは無く加熱調理して
食べることがほとんどですので、
問題になることが無いんです。

3.エアロゾル感染(準空気感染)
某ホテル内でノロウイルス感染症が大量発生した際に、
感染経路の特定に難航したことがあります。

結局、感染者が嘔吐したマットが
次亜塩素酸処理が不十分なまま使用され、
館内の循環換気孔を通じて
ホテル内の様々な部署やフロアに拡散し、
大量の感染者を出してしまった、
と言う極めて珍しいことが起きたことが
分かりました。

ノロウイルスは基本的には
接触拡散をするとされていますが、
実際には空気拡散や飛沫拡散をする、
と言うことですね。
直接飛沫を浴びることは、
感染者を介抱する親やパートナー、
医療者がほとんどとは思いますが。

介抱した後はしっかり掃除してから、
適切な濃度の次亜塩素酸を用いて
環境表面の清拭処置を行ない、
手洗いを適切に行いましょう。

【予防方法】
・適切な手洗い(トイレ後、料理前、食事前、外出後)

水道蛇口流水下で30秒擦り洗いをすれば、
病原体は100分の1に減らせます。
石鹸を使い10秒揉み洗いをして、
水道流水で15秒すすぎ洗いをすれば、
病原体は10000分の1に減らせます。

水が使えない場合には、
お絞りやウェットティッシュで
満遍なく手指表面を拭くことも有効です。

消毒成分を含まない物でも、
3回重ね拭きをすることで、
手洗いと同等の効果があると言う
報告もあります。

トイレ後、食事前に手洗い出来ていますか?
・調理時・食品への感染を予防
汚染された手や器具で
加熱後の食品に触れた場合も
汚染する可能性があるため、
調理時には十分注意が重要です。
・調理時によく加熱する
85-90度90秒加熱することで、
ノロウイルスが感染力を失います。

食中毒事件中、
加熱調理済みの牡蠣疑いは1割強で、
牡蠣フライが原因と推定されました。

アイスクリームの天ぷらがあるように、
フライなどの揚げ物の場合には、
芯まで加熱出来てないことがあり、
中のウイルスが死なない場合がある
という事です。

【牡蠣の生食用と加熱用の違い】
「生食用」と「加熱用」の牡蠣。実は全く違うモノと言っても良いくらい、
安全基準や処理工程が異なります。

まず「生食用」の場合ですが、
安全性を高める工夫がされています。

1.水質が基準内で安全だと
事前確認されている海域で獲られた牡蠣

2.紫外線やオゾンで殺菌した海水を循環させ、
牡蠣に濃縮されたウイルスを排出させ、
加工場毎の生食用牡蠣菌規格にします。

続いて「加熱用」の場合には、
海で採取され菌規格を計測しない場合もあり、
生食では感染リスクがあります。
プランクトン豊富な海水で育った上に、
栄養の無い滅菌海水処理を受けていないので、
加熱用の方が栄養豊富で生で食べると美味しい、
と言うことも言われたりしますが、
ギャンブル的な自殺行為です。

加熱用牡蠣にノロウイルスが存在する場合、
「湯引き」や「あぶり」「シャブシャブ」
などの半生調理をした場合、
ウイルスは感染性を失いません。
牡蠣表面ではなく体内に
ウイルスが濃縮されている事に
注意が必要です。

また、全く同じ物を食べていても、
体調や個人差で反応が変わることも多く、
生食は元気な時に適度にするのが基本です。

消費者としても、
お店で怪しいと感じたら、
無理に食べずに残す事も
身を守る手段となります。

【牡蠣の旬の季節とは?】
ちなみに牡蠣は英語圏では
「Rのつかない月には牡蠣を食べるな」
と言い伝えられています。
海外で良く食べられる真牡蠣は、
「Rのつかない月=5-8月」は産卵期で、
旨味成分を含む栄養素を
使い果たし味が落ちるとされます。

夏に旬を迎える「岩牡蠣」については、
真牡蠣と真逆で5-8月に旬を迎えます。

真牡蠣は養殖出来ますが、
岩牡蠣は養殖が難しいので天然物が主流。
そのため値段も高いことが多いです。

あまり気にせずに一年中食べている
と言う方もいらっしゃるかも
知れませんね(笑)

【まとめ】
ノロウイルス感染症は寒い時期になり、
冷たい水で手を洗わない人間が増える事で
間接的な感染が増加する可能性こそ、
注意しましょう。
消毒用アルコールで不活化できない
ノロウイルスには手洗いや手拭きが
とても大切になります。

「牡蠣を避ければ良い」と言う考えは、
9割のノロウイルス感染原因を
放置する事につながりますので
食中毒減少には繋がりません。
ノロウイルスが話題になった際は、
「手洗い(手拭き)と調理器具の洗浄」に
注目する様にしましょう。
調理器具の洗浄には、
煮沸消毒や次亜塩素酸処理が
有効ですのでお忘れなく。

そして中心部まで熱を通した牡蠣であれば、
タウリン、グリコーゲン、亜鉛など
豊富な栄養が取れますので、
栄養補給に是非活用して下さいね。

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